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2021/10/18

『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』の映画化に想うこと

| by:ts
 『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』が映画化になるという情報をWEB上のニュースで知った。監督は瀬々敬久氏で、主演は嵐の二宮和也さん。2022年に公開の予定。  
 『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』は、歌人でノンフィクション作家辺見じゅんさん(2011年9月逝去)が1989年に文藝春秋から出版したノンフィクション作品である。内容は、第二次世界大戦後に旧ソ連が不当に約70万人を捕虜としてシベリア収容所に収容した。零下40を超える厳寒の中で、飢えと重労働で約7万人が命を失った。そんな過酷な収容状況の中で、「ダモイ(帰国)は必ずある。それまで生き延びるんだ」と、精神を保つために短歌や俳句を教え、「生きる希望と夢」を与え続けていた島根県隠岐の島出身の山本幡男さん。その山本幡男さんも病に侵され臨終のときに家族に宛てた4500文字の遺言(「本文」「お母さま!」「妻よ!」「子供等へ」)を、6人の仲間たちが分担して山本さんの遺言を暗記し、やがて日本へ帰ってからそれぞれが家族へ伝えた。最後の遺言が届けられたのは昭和62年の夏であった。辺見さんはその遺言からシベリア抑留の、埋もれた真実を浮かび上がらせたのが『収容所(ラーゲリ)から来た遺書(文藝春秋)と、その作品を子どもから大人まで読める小説版に仕上げたのが『ダモイ遥かに』(メディアパル)である。
 生前、私は編集者として辺見じゅんさんと親しくお付き合いをいただいた。地方の文化活動として「作家の家」を島根県斐川町(現・出雲市)につくったり、福島県石川町では「辺見じゅん自分史講座」や「短歌の会」の講師なども務めていただいたりした。当時私は出版業界にいて「朝の読書」運動にも係わっていたことで、朝の読書の子どもたちに「平和と命の大切さ家族愛」を知ってもらうために、『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』を小説化して、子どもから大人まで読める本にしたいたいと提案した。「朝の読書」や「家読(うちどく)」応援者でもあったの辺見さんは快く快諾され、私が社長を務めていた出版社、メディアパルから出版することになった。新たに書き下ろしの小説版をつくるため、辺見さんはシベリアの現地取材をしたり、再び山本さんゆかりの方々を取材して、『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』には書けなかった新たな事実も書き表すことになった。そうして3年近くもの時間をかけて『ダモイ遥かに』を脱稿、装画と挿絵は伊勢英子さんが担当して、2008年4月にメディアパルから出版することができた。小説の形をとりながらも歴史に埋もれたシベリア抑留の実態が、さらに新しい事実を知ることで、埋もれた真実が明るみになったともいえるであろう。
 2021年夏、山本さんの故郷である島根県隠岐郡西ノ島町の国賀海岸に世界の平和を願って「山本幡男顕彰碑」が建立された。除幕式には辺見さんも立ち会われた。演技力のある二宮和也さんが、映画でどのような山本幡男さんを演じるのか楽しみなことであるが、辺見さんは『ダモイ遥かに』の「あとがき」で、このようなメッセージをおくっている。
 「山本幡男という一人の平凡な日本人の非凡な魂が、この本を読んでくださったあなたの心にすこしでも届くようにと、思っている。平成20年春 辺見じゅん」。
 辺見さんも天国で、この映画ができることをきっと喜んでおられると思う。合掌                                
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