2021/06/19 | 【こども】と【子ども】と【子供】の用語表記、あなたは何派? | | by:ts |
---|
最近、ある自治体の「子ども読書活動推進計画」を読んでいたら、タイトルに使用する【子ども】の表記について、国が平成13年に制定した「子どもの読書活動の推進に関する法律」の「子ども」表記と、平成30年に文部科学省が策定した「第四次子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」での「子供」表記の違いについて注釈が付けられていた。全国で読書活動に携わる方々や教育現場でも、【こども】・【子ども】・【子供】のいずれの表記にするか悩むことがあるという声も聴くので、この用語表記について少し調べてみた。
まず、子ども読書に関するいくつかの歴史的事業を取り上げてみると、国立の国際子ども図書館が開館する平成12年を「子ども読書年」とし、平成13年には「子どもゆめ基金」を制定。前述の「子どもの読書活動の推進に関する法律」によって国は平成14年に「第一次子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」を策定。平成20年「第二次子どもの読書活動に関する基本的な計画」、平成25年「第三次子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」を策定した。ところが、平成30年の「第四次」では、「第四次子供の読書活動推進に関する基本的な計画」と、第四次から「子ども」ではなく、「子供」という表記にかわったのである。そこで、各地の自治体が「推進計画」を策定する際に、【子ども】か【子供】か?と混乱が生じることになっているのだ。
そこで、文部科学省がなぜ、「こども」の表記を【子ども】から【子供】に統一したのかを少し調べてみた。すると「子供」の表記は昭和48年の内閣訓令で漢字表記とされていたが、「漢字より柔らかい印象がある」として、各省庁とも漢字と平仮名の交ぜ書きの【子ども】を使う例が増えていたことで、公用文書は漢字書きの「子供」に統一したと、当時の新聞が報じている。公用文書は平仮名との「交ぜ書き」ではなく、漢字表記を原則とすることを明確にしたようだ。
従って、平成30年に国が策定した「第四次子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」はタイトルから本文にいたる全文「子供」の表記になっていることから、地方自治体だ策定する「推進計画」の名称をどうするかと悩みがあるという。
私が所属する家読推進プロジェクトHP「うちどく.com」では、各地で策定された「子ども読書活動推進計画」で、「家読」推進が盛り込まれている計画のみ掲載してる。現在(令和3年6月13日)約350件の掲載になっているが、タイトルに「子供」と表記している計画は都道府県で東京都他4県のみ。市町村の推進計画はすべて「子ども」表記である。読書推進計画のみでなく、多くの自治体や図書館や学校が「子ども」表記を使っている理由には、「【子ども】表記は柔らかく、あたたかいイメージがる」「幼児から高校生までの年齢層の幅がある」や「基本的人権の観点から」という子どもの存在を尊重する配慮もあるようだ。それに対し、「子供の”供”は供える、や、お供するという従属的な意味合いもあり、ふさわしい言葉ではない」という意見もある。いずれにしても今の時代、世間では子どもたちの主体性を育もうという新しい時代の風潮を表すに、【子ども】表記が主流になっていることは間違いのないことであり、国の言語感覚は世間の現実と大きなズレがあるように思える。
その一方で、今政府が議論をすすめている子どもに関わる政策を集約する【こども庁】創設の動きがある。この【こども庁】の名称、【子供庁】にしなくてよいのだろうかと気になった。そして【こども庁】が開設された場合、公文書等での”こども”用語表記はどうなるのか注視してみたい。
【追補】
文部科学省が「子供」表記に統一した当時、新聞で使う用語をどうするか、新聞社内で大議論になったようだ。そこで最近の新聞用語はどうなっているのか、直近10日間の各新聞を調べてみた。
朝日新聞はこの期間の記事だけでも『「子どもの政策」子どものために」』や、『「子どもの目線」で迫力を』、『子どものワクチンどうする』等々大きな見出しが目につく。本文記事も「子ども」で統一され、同紙の連載タイトル「いま子どもたちは」は、6月23日付で1755回目である。
毎日新聞と日本経済新聞と東京新聞も「子ども」表記。読売新聞は見出しに「子供」はあるものの、本文では「子ども」表記になっていた。見出しはレイアウト上の都合かもしれない。産経新聞は見出しと本文で「子供」表記になっている。
地方紙においては共同通信社の『記者ハンドブック』で「子供」と「子ども」どちらでもよいようだが、【子ども】表記に統一する新聞社が多い。テレビでは、NHKも『NHK新用字用語辞典』に倣って【子ども】表記で統一されている。
以上、上記各紙の用語表記については、単純に記事から参考にしたものであることをお断りしておく。