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子どもの読書活動の推進に関する有識者会議 論点まとめ

はじめに

 子供の読書活動は,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであり,社会全体で積極的にそのための環境の整備を推進していくことは極めて重要である。
「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号。以下「推進法」という。)第8条第1項では,国は「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という。)を策定することとされている。これに基づき政府は,平成14年8月に最初の基本計画を定め,その後,平成20年3月には第二次基本計画,平成25年5月には第三次基本計画を定めて子供の読書活動を推進してきた。
 平成29年度は第三次基本計画策定から5年目の年であり,次期基本計画の策定に向けて検討を行う時期を迎えていることを踏まえ,第三次基本計画期間における成果や課題,諸情勢の変化等を検証し,次期基本計画が,我が国における子供の読書活動の推進に一層意義のあるものになるよう,子供の読書活動推進に関する有識者会議(以下「本会議」という。)においてその更なる推進方策について検討を行ったものである。

第1章 子供の読書活動に係る現状と課題

  • 近年,生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化し,予測が困難な時代になっている。子供たちには,様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構築できるようにすることが求められている。
  • 一方,情報通信技術(ICT)を利用する時間は増加傾向にある。あらゆる分野の多様な情報に触れることがますます容易になる一方で,視覚的な情報と言葉の結び付きが希薄になり,知覚した情報の意味を吟味したり,文章の構造や内容を的確に捉えたりしながら読み解くことが少なくなっているのではないかとの指摘もある。
  • このような状況にあって,現在,学習指導要領等の改訂や高大接続改革が行われているところである。その中で,読書活動は,精査した情報を基に自分の考えを形成し表現するなどの「新しい時代に必要となる資質・能力」を育むことに資するという点からも,その重要性が高まっていると考えられる。
  • 第三次基本計画においては,子供の不読率(1か月に一冊も本を読まない子供の割合であり,平成24年度には小学生4.5%,中学生は16.4%,高校生は53.2%であった。)をおおむね5年後に小学生3%以下,中学生12%以下,高校生40%以下とし,10年間で半減させる(平成34年度に小学生2%以下,中学生8%以下,高校生26%以下とする)ことを目標としていた。
  • 平成29年度に行われた「学校読書調査」(公益社団法人全国学校図書館協議会及び株式会社毎日新聞社)によると,1か月間に一冊も本を読まなかった「不読者」の割合(不読率)は小学生5.6%,中学生15.0%,高校生50.4%であり,高校生の不読率については,改善傾向にあるものの,目標達成には遠い状況である。
  • 第四次基本計画の策定に当たっては,このような読書活動を取り巻く情勢の変化や子供の読書活動の状況を踏まえ,一層子供の読書活動の効果的な推進が求められる。

第2章 課題の分析と取組の方向性

  • 子供は,読書を通じて,読解力や想像力,思考力,表現力等を養うとともに,多くの知識を得たり,多様な文化を理解したりすることができるようになる。また,文学作品に加え,自然科学・社会科学関係の書籍や新聞,図鑑等の資料 (※1)を読み深めることを通じて,自ら学ぶ楽しさや知る喜びを体得し,更なる探究心や真理を求める態度が培われる。
  • このような読書で培われる力を育むためには,子供自身が読書の楽しさを知るきっかけを作り,読書の幅を広げ,読書体験を深めるような機会を提供するとともに,そのための環境作りに努めることが必要である。その際には,乳幼児期からの子供の発達段階や,読書を取り巻く状況の変化に留意する必要がある。
  • 子供の読書活動の状況を示す一つの指標である子供の不読率について見ると,これまで乳幼児期から中学生期までの子供については,各地域で様々な読書活動の推進に関する取組が行われてきたこともあり,小学生と中学生の不読率は中長期的に改善傾向にあるものの,前述のとおり,高校生の不読率は依然として高い状況にある。
  • 平成28年度「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」(文部科学省)によると,読書を行っていない高校生は,中学生までに読書習慣が形成されていない者と,高校生になって読書の関心度合いが低くなり本から遠ざかっている者に大別されると考えられる。
  • このような現状を改善するために,前者には発達段階に応じて読書し読書を好きになる,つまり読書習慣の形成を一層効果的に図る必要があり,後者には読書の関心度合いが上がるような取組を推進する必要がある。
  • 前者については,子供が発達段階に応じて読書習慣を身に付けることができるよう,乳幼児期からの読書活動が重要であることを踏まえつつ,後述の発達段階ごとの特徴を考慮した効果的な取組を実施することが重要である。
  • 後者について,「第2回放課後の生活時間調査―子どもたちの24時間―ダイジェスト版」(2015年ベネッセ教育総合研究所)によれば,勉強する時間やメディアを利用する時間が放課後の時間の多くを占めている実態があることに鑑みると,高校生の時期の子供が多忙の中でも読書をするきっかけを作り出す必要がある。平成28年度「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」(文部科学省)によると,高校生の時期の子供は,友人等同世代の者から受ける影響が大きい傾向があることから,読書をするきっかけを作り出す方法としては,友人等からの働き掛けを伴う,子供同士で本を紹介するような取組の充実が有効であると考えられる。
  • このように,子供の読書への関心を高めるために,国,都道府県,市町村は,子供の実態やそれを取り巻く状況の変化を踏まえ,取組の充実・促進を図ることが望まれる。
  • スマートフォンの普及や,それを活用したSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等コミュニケーションツールの多様化等,子供を取り巻く情報環境が大きな変化を見せており,これらは子供の読書環境にも大きな影響を与えている可能性がある。これらについて,国は,計画の実施期間中にこうした読書活動の変化に関する実態把握とその分析等を行う必要がある。
  • 都道府県や市町村においては,このような方向性を踏まえつつ,子供の読書活動の推進が家庭,地域,学校等を通じた社会全体で取り組まれるよう,必要に応じて推進計画等の見直しを行うとともに,必要な推進体制の整備が行われることが望まれる。
    加えて,子供の読書活動に関する理解や関心を高めるとともに,子供が読書に親しむ様々な機会を提供するなど,子供の自主的な読書活動を推進することに大きく寄与している民間団体の活動に対する支援が行われるとともに,優良事例の紹介等の普及啓発活動が行われることが重要である。
  • 第四次基本計画においても,国においては第1章及び第3章1で述べる第三次基本計画における数値目標を引き続き設定し,その達成に向けた取組を行うことが重要である。

※1 電子書籍等の情報通信技術を活用した読書も含む。

第3章 具体的な取組

1 国,都道府県,市町村の役割

  • 第2章で述べたように,都道府県や市町村における推進体制を整備することは重要である。
  • 第三次基本計画においては,「市町村子ども読書活動推進計画」(以下「市町村推進計画」という。)の策定率を第三次基本計画期間中に市100%,町村70%以上とすることを目標としていた。
  • 平成28年度「都道府県及び市町村における「子ども読書活動推進計画」の策定状況に関する調査」(文部科学省)によると,市町村推進計画の策定率(平成28年度末)は,市88.6%,町村63.6%であり,とりわけ町村の策定率が低いことから,この策定を促す必要がある。
  • 発達段階に応じて子供の読書活動を推進するに当たっては,子供や保護者に最も近い立場にある市町村の役割が重要である。
  • 市町村推進計画未策定の市町村においては,基本計画及び都道府県推進計画を基本として,市町村推進計画を策定するよう努めることが求められる。一方,市町村推進計画未策定の市町村を対象としたアンケート結果によると,未策定の理由として「人材が不足している」(※2) ,「図書館を設置していない」という点を挙げるところが多く,後述する都道府県の支援や助言も必要とされている。
  • 市町村推進計画を既に策定している市町村においても,基本計画及び都道府県推進計画の見直しの状況を踏まえながら,推進計画で設けられた目標の達成度や行われた取組の効果について点検及び評価を行い,適切な推進が図られるよう努めるとともに,必要に応じて推進計画の見直しを行うことも重要である。
  • 市町村推進計画に基づいて効果的な取組が一層推進されることが重要であるが,これに当たっては,教育委員会のみならず福祉部局等の他の部局や,学校,図書館,民間団体,民間企業といった関係者が連携,協力し,横断的な取組が行われることが重要である。
  • 都道府県は,市町村の読書計画の推進に当たって図書の長期貸出し等都道府県立図書館からの支援を行うとともに,他の市町村の取組事例の紹介や域内の市町村や民間団体が連携して読書活動を推進するための助言等を行うべきである。特に,課題となっている高校生の時期の子供を対象とした取組については,多数の高等学校を所管する立場から,市町村と連携しつつ,取組を推進することが重要である。
  • 都道府県では前述の市町村と同様に,基本計画の見直しの状況を踏まえながら,都道府県推進計画で設定した目標の達成度や行われた取組の効果について点検及び評価を行い,適切な推進を図るとともに,必要に応じて推進計画の見直しを行うことが重要である。また,教育委員会のみならず福祉部局等の他の部局や,学校,図書館,民間団体,民間企業といった関係者が連携,協力し,横断的な取組が行われることが重要である。
  • 国では,国民の間に広く子供の読書活動についての関心と理解を深めるために,都道府県,市町村,民間団体等と連携し,「子ども読書の日」等の全国的な普及啓発の推進や,優れた取組の奨励を図ることが求められる。
  • 都道府県が行う取組の点検及び評価や都道府県による市町村への支援の際に,国は,必要な支援を行うことが求められる。具体的には,子供や子供の読書活動に関する現状のデータ,優良事例(読書に関わる主体の連携による取組,子供同士の取組,教員研修等)等の情報を収集・分析・提供するとともに,必要な助言を行うべきである。
  • スマートフォンの普及や,それを活用したSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等コミュニケーションツールの多様化等,子供を取り巻く情報環境が大きな変化を見せており,これらは,子供の読書環境にも大きな影響を与えている可能性がある。スマートフォン利用の長時間化により読書活動が減少している可能性や,これを活用した読書活動の推進や言語活動の充実方策について,国は,計画の実施期間中にこうした読書活動の変化に関する実態把握とその分析等を行う必要がある。

※2 本会議においても,「市町村推進計画を策定し,これに基づき取組を推進する人材が不足している」との指摘があった。

2 発達段階に応じた取組

 第2章で述べたように,発達段階に応じて子供が読書習慣を身に付けるための取組が行われることが重要である。

(1)発達段階ごとの特徴等

  • 子供が読書を好きになり,自主的に読書をするようになるためには,乳幼児期から発達段階に応じた取組が行われることが重要である。
  • 家庭,地域,学校等で具体的な取組が行われるに当たっては,読書に関する発達段階ごとの特徴として例えば以下のような傾向があることを踏まえつつ,乳幼児,児童,生徒の一人一人の発達や読書経験に留意し,取組が進められることが重要である。また,学校種間の接続期において生活の変化等により子供が読書から遠ざかる傾向が見られることに留意し,学校種間の連携による切れ目のない取組が行われることが重要である。

1 幼稚園・保育所等の時期(おおむね6歳頃まで)
 乳幼児期には,周りの大人から言葉を掛けてもらったり乳幼児なりの言葉を聞いてもらったりしながら言葉を次第に獲得するとともに,絵本や物語を読んでもらうこと等を通じて絵本や物語に興味を示すようになる。更に様々な体験を通じてイメージや言葉を豊かにしながら,絵本や物語の世界を楽しむようになる。
2 小学生の時期(おおむね6歳から12歳まで)
小学校低学年では,本の読み聞かせを聞くだけでなく,一人で本を読もうとするようになり,語彙の量が増え,文字で表された場面や情景をイメージするようになる。
 中学年になると,最後まで本を読み通すことができる子供とそうでない子供の違いが現れ始める。読み通すことができる子供は,自分の考え方と比較して読むことができるようになるとともに,読む速度が上がり,多くの本を読むようになる。
 高学年では,本の選択ができ始め,その良さを味わうことができるようになり,好みの本の傾向が現れるとともに読書の幅が広がり始める一方で,この段階で発達がとどまったり,読書の幅が広がらなくなったりする者が出てくる場合がある。
3 中学生の時期(おおむね12歳から15歳まで)
 多読の傾向は減少し,共感したり感動したりできる本を選んで読むようになる。自己の将来について考え始めるようになり,読書を将来に役立てようとするようになる。
4 高校生の時期(おおむね15歳から18歳まで)
 読書の目的,資料の種類に応じて,適切に読むことができる水準に達し,知的興味に応じ,一層幅広く,多様な読書ができるようになる。

(2)発達段階に留意した取組

2-1 家庭における取組

  • 家庭における読書は,一冊の本を媒介にして家族が話し合う時間を持ち,絆(きずな)を深める手段として重要なものであり,学校,図書館等の連携により,家庭教育支援の取組も活用しつつ行われることが重要である。
  • 家庭における読書の推進に当たっては,図書館等がお薦め本のリーフレットを作成したり,それを学校に貸し出したりすること等家庭での活用がされるような工夫が重要である。
  • 図書館,市町村保健センター,ボランティア団体等の様々な機関が連携・協力して,乳幼児と周りの大人が一緒に時間を過ごし,家庭における子供の読書活動の推進を図るきっかけとなるよう,乳幼児への読み聞かせの体験とともに乳幼児と保護者に絵本を手渡す「ブックスタート」,乳幼児が言葉を獲得するきっかけとしての絵本や物語の読み聞かせや,わらべうたに親しむ活動等が実施されることが重要である。
  • 家庭において子供を中心に家族で同じ本を読むことで,本を媒介として相互理解を深め,家族の絆(きずな)が一層深まることを目指す活動である「家読(うちどく)」(※3) は多くの市町村において実施されているが,このような取組が更に推進されることが重要である。

2-2 地域における取組
ア 図書館

1 役割

  • 図書館は,地域における子供の読書活動を推進する上で重要な役割を果たしており,引き続き,図書館における取組を充実させていくことが重要である。
  • 図書館は,図書館法(昭和25年法律第118号)や「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に基づき,地域における子供の読書活動の推進における中心的な役割を果たすことが重要である。
  • 公立図書館を設置していない市町村においては,「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を踏まえ,公立図書館の設置について積極的に取り組むことが重要である。

2 取組

  • 中学生や高校生が気軽に図書館に足を運び,図書を借りたくなるような蔵書の充実,展示,ブックリストの作成等事業の工夫,インターネットを通じた情報発信,施設整備等が重要である。
  • 障害のある子供に対するサービスとして,点字資料や録音資料の製作等を行う施設と連携するなどして,これらの資料の整備・提供,手話・筆談等によるコミュニケーションの確保,図書館利用の際の介助,図書館資料等の代読サービスの実施等を行うことが期待される。
  • 事業においては,読書会,ペア読書,読み聞かせ会,お話(ストーリーテリング),ブックトーク,アニマシオンや,書評合戦(ビブリオバトル)(※4) 等対象となる子供の特性や実施する場所を踏まえ取組の工夫が行われることが重要である。
  • また,子供自身に専門の読書の知識を学んでもらい,図書館等地域の読書推進力になってもらう「子ども司書制度」の取組や,「読書コンシェルジュ」の取組等子供同士で行われる取組も重要である。

3 連携・協力

  • 他の図書館や学校図書館との連携・協力体制を強化し,団体貸出しや相互貸借等の取組を行うとともに,図書館職員が学校を訪問するなど図書館の持つ力を積極的に発揮した取組を行うことが重要である。
  • 絵本専門士等読書活動に関する専門的知識を有する者や地域のボランティア等多様な人々の参画を得ることが重要である。あわせて,文庫活動等地域の活動との連携や,子供が集まる地域の居場所の活用等地域ぐるみで読書推進に取り組むことが重要である。

4  人的体制

  • 司書及び司書補は,児童・青少年用図書等をはじめとする図書館資料の選択・収集・提供,読み聞かせ等子供の読書活動の推進に資する取組の企画・実施,子供の読書に関する保護者の相談への対応等,子供の読書活動の推進における重要な役割を担っており,司書及び司書補の適切な配置が行われることが重要である。
  • 司書,司書補の資質・能力の向上を図るため,図書館法第7条の規定に基づき継続的・計画的な研修が実施されることが重要である。

イ その他

  • 国立国会図書館「国際子ども図書館」は,「児童書のナショナルセンター」としての役割を担っており,図書館,学校図書館等との連携・協力を推進することが重要である。
  • 公民館図書室等は,身近な読書活動を行う施設として機能していることも多いことから,公立図書館と連携し,児童・青少年用図書等の整備に努めるほか,地域住民と連携・協力し,読み聞かせ等の子供の読書活動の機会を提供する取組の実施に努めることが重要である。
  • 放課後や休日に子供たちが集まる児童館,放課後子供教室,放課後児童クラブ等の地域の居場所についても,絵本専門士等の読書活動に関し専門的知識を持つ者や地域のボランティア等多様な人々の参画を得ながら,子供が読書に親しむ取組を行うことが重要である。

2-3 学校等における子供の読書活動の推進

ア 幼稚園・保育所等

  • 幼稚園,保育所等においては,幼稚園教育要領や保育所保育指針等に基づき,保護者,ボランティア等の協力も得ながら,乳幼児が絵本や物語に親しむ活動の充実を促すことが重要である。
  • 幼稚園,保育所等において,安心して図書に触れることができるようなコーナーを確保し,保護者,ボランティア等と連携・協力しながら,図書の整備を図ることが重要である。

イ 小学校・中学校・高等学校等

1 役割

  • 全ての子供の読書活動を支援し,読書指導を充実することにより,読書の量を増やすことのみならず,読書の質をも高めていくことが学校に求められる役割であることを踏まえ,学習指導要領等を踏まえた積極的な読書活動の推進に取り組むことが求められる。
  • 新小学校及び中学校学習指導要領においては,言語能力の育成を図るために,各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,言語活動を充実することや,学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,児童生徒の自主的,自発的な読書活動を充実することが規定されている。
  • 小学校・中学校・高等学校等の各学校段階において,児童生徒が生涯にわたる読書習慣を身に付け,読書の幅を広げるため,読書の機会の拡充や図書の紹介,読書経験の共有により,様々な図書に触れる機会を確保することが重要である。

2 全校一斉の読書活動

  • 現在多くの学校において朝の始業時間前に読書の時間を設ける「朝の読書」の活動が行われているが,不読率の改善という観点から,このような全校一斉の読書活動は効果的である。高等学校等においても,自主性を尊重しつつ行われることが重要である。

3 子供同士の取組

  • 子供が相互に図書を紹介し,様々な分野の図書に触れる活動,読書会,ペア読書,お話(ストーリーテリング),ブックトーク,アニマシオン,書評合戦(ビブリオバトル)等,子供が自主的に自由な読書を楽しみながら学校や家庭における読書習慣を確立し,更に読書の幅を広げるとともに,同世代に読書を広めていく取組の実施を促していくことが重要である。

4 障害のある子供の読書活動

  • 障害のある子供は,特別支援学校のみならず通常の学校にも在籍していることを踏まえ,全ての学校において障害のある子供もまた豊かな読書活動を体験できるよう,点字図書や音声図書など,一人一人の教育的ニーズに応じた様々な形態の図書館資料の整備が図られるとともに,学習指導要領等に基づき自発的な読書を促す指導が行われるための取組を推進する。

5 学校図書館

  • 学校図書館については,学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であり,1児童生徒の読書活動や児童生徒の読書指導の場である「読書センター」としての機能,2児童生徒の学習活動を支援したり,授業の内容を豊かにしてその理解を深めたりする「学習センター」としての機能,3児童生徒や教職員の情報ニーズに対応したり,児童生徒の情報の収集・選択・活用能力を育成したりする「情報センター」としての機能を有している。
  • 学校においては,「学校図書館ガイドライン」を参考に,学校図書館の整備充実を図ることが重要である。
  • これからの学校図書館には,主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善を効果的に進める基盤としての役割も期待されている。
  • 校長は学校図書館の館長としての役割も担っており,校長のリーダーシップの下,計画的・組織的に学校図書館の運営がなされるよう努めることが望ましい。例えば,教育委員会が校長を学校図書館の館長として明示的に任命することも有効である。
  • 学校図書館については,学校図書館資料の整備充実,学校図書館施設の整備,学校図書館の情報化,蔵書の貸出しの促進,子供に本を借りることを習慣化させる取組が図られることが重要である。
  • 学校図書館は,可能な限り児童生徒や教職員が最大限自由に利活用できるよう,また,一時的に学級になじめない子供の居場所となりうること等も踏まえ,必要に応じ,地域の様々な人々の参画も得ながら,児童生徒の登校時から下校時までの開館に努めることが重要である。また,登校日等の土曜日や長期休業日等にも学校図書館を開館し,児童生徒に読書や学習の場を提供することも有効である。
  • 図書委員等の子供が学校図書館の運営に主体的に関わり,学校図書館を利用して読書を広める活動を行うことも重要である。
  • 学校図書館においては,図書館との連携・協力体制を強化し,相互貸借等を行うことが重要である。

6 人的体制

  • 司書教諭は,学校図書館の専門的職務をつかさどる教員であり,学校図書館法第5条及び附則第2項の規定に基づく政令により,平成15年度以降,12学級以上の学校(小学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校)に必ず置かなければならないこととされている。
  • 学校司書は,専ら学校図書館の職務に従事する職員であり,学校においてはその配置に努めることとされている。
  • 学校司書の配置の充実や,教職員を対象とした研修機会の充実等が図られることが重要である。また,教員の養成課程において,各大学の主体的な判断により読書教育に関する取組が推進されることが期待される。
  • 司書教諭が学校図書館に関する業務に従事する時間を確保できるよう,学校における職務分担について柔軟に対応することが重要である。
  • 司書教諭や学校司書のみならず全ての教職員が連携するとともに,保護者や地域のボランティアの協力も得ながら,児童生徒の学習活動・読書活動を推進していく体制を整備することも有効である。

※3 地域によっては,「家庭読書」や「ファミリー読書」と呼ばれることもある。
※4 読書会,ペア読書,お話(ストーリーテリング),ブックトーク,アニマシオン,書評合戦(ビブリオバトル)の詳細については,以下の「3 子供の読書への関心を高める取組」参照。

3 子供の読書への関心を高める取組

  • 第2章で述べたように,特に高校生の時期の子供の読書への関心を高めるためには,友人等の同世代の者とのつながりを生かし,子供同士で本を紹介したり話合いや批評をしたりする活動が行われることが有効と考えられる。
  • 本を紹介したり本についての話合いや批評をしたりする活動は,ゲーム感覚で行えるものもあるほか,「心に残る一冊の本」と出会う読書のきっかけになるとともに,本の理解を深めることにつながる重要なものである。
  • 本についての話合いや批評をすることは,読む本の幅を広げるきっかけとなったり,他者の異なる考えを知り,それを受容したり改めて自分自身の考えを見つめ直す経験ができたりするといった点でも有効と考えられる。
  • また,例えば既に以下のような取組が各地域で行われてきており,このような取組を参考に推進方策を検討することも重要である。
  • 読書会
    数人で集まり,本の感想を話し合う活動である。その場で同じ本を読む,事前に読んでくる,一冊の本を順番に読むなど様々な方法がある。この取組により,本の新たな魅力に気付き,より深い読書につなげることができる。
  • ペア読書
    二人で読書を行うものであり,家族や他の学年,クラス等様々な単位で一冊の本を読み,感想や意見を交わす活動である。この取組により読む力に差がある場合も相手を意識し,本を共有することにつなげることができる。
  • お話(ストーリーテリング)
    語り手が昔話や創作された物語を全て覚えて自分の言葉で語り聞かせ,聞き手がそれを聞いて想像を膨らませる活動である。直接物語を聞くことで,語り手と聞き手が一体になって楽しむことができる。
  • ブックトーク
    相手に本への興味が湧くような工夫を凝らしながら,あるテーマに沿って関連付けて,複数の本を紹介すること。テーマから様々なジャンルの本に触れることができる。
  • アニマシオン
    読書へのアニマシオンとは,子供たちの参加により行われる読書指導のことであり,読書の楽しさを伝え自主的に読む力を引き出すために行われる。ゲームや著者訪問等様々な形がある。
  • 書評合戦(ビブリオバトル)
    発表者が読んで面白いと思った本を一人5分程度で紹介し,その発表に関する意見交換を2~3分程度行う。全ての発表が終了した後に,どの本が一番読みたくなったかを参加者の多数決で選ぶ活動である。ゲーム感覚で楽しみながら本に関心を持つことができる。
  • 図書委員,「子ども司書」,「読書コンシェルジュ」等の活動
    子供が図書館や読書活動について学び,お薦め本を選定して紹介したり,同世代の子供を対象とした読書を広める企画を実施したりする活動である。自ら読書に関する理解を深めるとともに,読書活動の推進役となり,同世代の子供の読書のきっかけを作り出すものである。
  • 子供同士の意見交換を通じて,一冊の本を「○○賞」として選ぶ取組
    参加者が複数の同じ本を読み,評価の基準も含めて議論を行った上で,一冊のお薦め本を決める活動である。複数の本を読み込み,共通の本について自身の考えで話し合うことで,自分と異なる視点を知り,自身の幅を広げることにつながるものである。
  • また,子供の読書への関心を高めたり,読書の幅を広げたりするきっかけとなるよう,例えば,マンガやアニメ・ゲームといった本以外のものの内容や作者に関連した本から紹介することを含め,個人の読書経験や興味関心に寄り添いながら本を紹介する方法も有効と考えられる。

4 民間団体の活動に対する支援

  • 第2章で述べたように,都道府県や市町村における取組に加え,民間団体の活動も子供の読書活動の推進にとって必要である。
  • 読書活動に関連するボランティアのより広範な活動を促すとともに,民間団体や民間企業等の取組を周知し,社会全体での取組を促すことが重要である。
  • 子供の読書活動の推進を図る民間団体の活動をより充実させるとともに,民間団体がネットワークを構築して実施する情報交流や合同研修等の促進を図るため,民間団体やボランティアの取組を周知するとともに,「子どもゆめ基金」(※5) をはじめとした助成等により,これら民間団体の活動を支援することが重要である。
  • 都道府県及び市町村においては,域内のボランティアグループや企業の社会貢献活動の取組等の状況を把握するとともに,子供の読書活動で公共性が高いと認められるものについては,活動の場の確保のため,域内の公民館等の公共施設の利用に便宜を図るなど,奨励方策を講ずることが期待される。

※5 子どもゆめ基金:独立行政法人国立青少年教育振興機構に設置され,青少年教育に関する民間団体が実施する読書活動や体験活動に対して助成金を交付する。

5 普及啓発活動

  • 第2章で述べたように,子供の読書活動に関する優良事例の紹介等の普及啓発活動が行われることが重要である。
  • 「子ども読書の日」(4月23日)を中心とした全国的な普及啓発の推進を行うこと,優れた取組の奨励を行うこと,優良な図書の普及を行うことが重要である。
  • 子供の読書活動が学校,図書館,民間団体,書店等の民間企業等相互の連携により行われるよう,国,都道府県及び市町村が各種情報の収集,提供を行うことが重要である。また,各大学の主体的な判断により教員の養成課程において読書教育に関する取組が推進されるよう,国において,必要な情報の収集,提供が行われることが重要である。
  • 国は,子供の読書活動を推進するため,子供が読書に興味を持つような活動,関係者の資質向上のための活動,関係する機関や団体間の連携等において特色ある優れた実践に対し表彰を行うことにより,その取組の奨励を図ることが重要である。

お問合せ先

生涯学習政策局青少年教育課

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(生涯学習政策局青少年教育課)

-- 登録:平成30年03月 --